親族承継は宝くじ?/出口から考える「逆算経営」とは

MG(マネジメントゲーム)では、よく「経営は逆算である」と伝えています。

しかし、本当の意味で「人生や会社の出口」から逆算できている経営者は、驚くほど少ないのが現実です。

元気な社長も、いつかは必ず歳をとります。

その時、あなたの会社はどうなるのでしょうか?

 

■ 会社の出口は「4つ」しかない

企業の出口は、例外なく以下の4つに行き着きます。

事業承継(親族や社員へ)

M&A(第三者への譲渡)

廃業(会社を畳む)

IPO(株式公開)

ここでは④のIPOは除きます。

では、①~③のうち、最も現実的なのはどれだと思いますか?

「うちは息子に継がせるから大丈夫(①事業承継)」

昔はそうでした。決算書が読めなくても、借金の連帯保証人が何人いても、親族が継ぐのが当たり前でした。

しかし、今は情報化社会です。

後継者候補である子どもたちは、親の会社の財務状況をシビアに見ています。

「借入金が多い会社なんて、継ぎたくない」

これが、後継者の偽らざる本音であり、事業承継を難しくしている最大の要因です。

ある税理士さんは、「顧問先でスムーズに親族内承継(①)ができる確率は、100分の1、いやほとんどない」とおっしゃっていました。

つまり、「良い後継者に恵まれる」というのは、今や「宝くじに当たる」ようなものなのです。

■ 娘の一言で「リスケ」を決意した社長

ここで、私が知っているある社長の話を紹介します。

その会社は収益も出ており、社長は娘さんに継がせたいと考えていました。

しかし、娘さんは首を縦に振りません。理由は「借入金の多さ」でした。

そこで社長はどうしたか?

なんと銀行に相談に行き、毎月の返済額を「増やす」という、通常とは逆のリスケジュールを実行したのです。

「俺が元気なうちに借金を減らすから、継いでくれ」と。

その覚悟と数字の変化を見て、ようやく娘さんは承継の意思を固めたそうです。

 

一方で、こんな厳しい事例もあります。

ある歴史ある製造業では、高齢社長と後継者の引き継ぎがうまくいかず、後継者は気持ちが折れ、水面下でM&Aが進められていました。最終的に社長は「M&Aか、廃業か」という二択を迫られ、不本意ながら会社を手放すことになったのです。

 

■ 「M&Aができる会社」にしておくことが、最強の防衛策

くじ運(後継者の有無)に頼らず、思い入れのある会社を確実に残すにはどうすればいいか?

それは、「いつM&A(②)になっても大丈夫な会社にしておくこと」です。

実際に売るかどうかは別として、「他人が買いたくなるような値付けがつく会社」にしておくことこそが、真の「経営の逆算」です。

M&Aの企業価値評価(値付け)はシンプルです。

ざっくり言うと、以下の計算式で表されます。

 

譲渡価格 = 純資産 + (実質営業利益 3~5年分)                                           ※3~5年は業種業態による。 管理場は3年で計算。本格的な計算は専門家に聞くのをおすすめします。

 

(※実質営業利益=EBITDA。営業利益に減価償却費などを足し戻したもの)

ここで重要なのは、「税金を払うのが嫌だから」と意図的に利益を減らしていると、いざという時に値段がつかないということです。

「節税」のつもりが、会社の「売却価値」を下げ、結果として廃業(③)しか選べない状況を自ら作ってしまうのです。