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なぜ「永守節」は躓いたのか? トップダウン経営の限界と功罪

ニデックの永守さんが、経営の第一線から退くことになった。

2025年9月以降、資産評価減の時期を恣意的に操作するなど不適切な会計処理の疑いが発覚。監査法人は「意見不表明」とし、東証からは特設注意市場銘柄(または監理銘柄)に指定されるなど、会社は経営危機に陥った。

実は私、永守さんに憧れて、6年前に京都で行われた株主総会に参加したことがある。 当時、業績は絶好調。時価総額も国内トップ10に入る勢いだった。

 

好調な業績にレバレッジをかけて、M&Aを積極的に仕掛ける。買収した会社は1年程度で黒字化させる。その手腕は、まさに「経営の神様」に見えた。

そして、株主総会での話がとにかく面白かった。 株主には中小企業の経営者も多く、会場全体が彼に心酔しているようだった。私にとっても憧れの存在だった。

 

そんなカリスマ経営者が、どうして引責辞任に追い込まれたのか?

心当たりは、あの時の株主総会にあった。 絶好調の「永守節」に対して、他の役員たちが妙に静かだったのだ。全員が永守さんの顔色を窺い、合わせているのが垣間見えた。あれだけ盛り上がっている永守さんに、冗談の一つも言える役員はいなかった。

 

なぜ、最強に見えたトップダウン経営は躓くのか? 私は、長続きしない理由が3つの観点にあると考える。

部下が数字を隠すようになる

永守さんは「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」の精神で会社を急拡大させてきた。永守さん本人の意図はともかく、部下にとって「出来なかった場合」の逃げ道はない。結果、「不正をしてでも報告する(数字を作る)」という企業風土が生まれてしまったのではないかと指摘されている。

 

②部下が成長しなくなる

トプダウン組織は「考える人」と「実行する人」を明確に分けてしまう弊害がある。実行する側も最初は反対意見を持つかもしれないが、そのうち「考えても無駄だ」と諦めるようになる。アイデアも浮かばなくなり、やらされている感覚が強まるためモチベーションも上がらない。人間は、自分の頭で考え、自律して行動することでしか成長しないのだ。

 

③時代の変化(社員の価値観の変化)

昔はとにかく、皆が熱意に燃えていた。「寝なくても働いて、クルマが欲しい、家が欲しい」。そんなハングリーな欲求でエネルギーに満ちた社員が多かった。 しかし、現在は違う。 車も家もそこまで欲しくないし、結婚も必須ではない。そんな価値観の社員が増えている。トップがいくら昭和的な号令をかけても、本気で動く社員はいなくなってしまった。

瞬間的な数字よりも、長く成長し続ける企業へ。 それには今後、ボトムアップ型のリーダーが必要になるだろう。

永守さんが成し遂げてきた偉業を、全否定する必要はない。 ただ、あのカリスマ経営者がどうして今回の事態を招いたのか? 同じ過ちを繰り返さないためにも、しっかりと今後の行方を注視していきたい。