20代の5人に1人が不調。休み明けに「空席」を作らないための経営術

  

「お正月休みから、無事全員出社しましたか?」

 

もし、あなたの会社のデスクに一つでも「空席」があるのなら、これは他人事ではありません。今、長期休暇明けに会社に来られなくなる人が急増しています。

 

厚生労働省のデータによれば、精神障害による労災請求はこの10年で2.7倍に膨れ上がりました。特に深刻なのは20代です。正規雇用者の約5人に1人が、治療なしでは日常生活が困難なほどの不調を経験しているという調査結果もあります。

 

なぜ、これほどまでにメンタルヘルス対策が叫ばれているのに、現場は改善されないのでしょうか。

 

昭和の「号令」が、令和の現場を壊している

 

その理由は、根本的な原因に向き合っていないからです。

 

今の現場は、10年前とは比べものにならないほどの情報量にさらされています。一方で、働く時間は厳しく制限されている。

そんな限界ギリギリの現場に対し、上層部からは昭和から続く「気合の売上アップ」の号令が飛ぶ。

 

社長は数字を追い、管理職は達成意欲を失い、現場のスタッフは「なぜこの仕事をするのか」という納得感もないまま、ただ作業をこなしている。これでは、心が折れるのは時間の問題です。

 

「敬意」がもたらした奇跡:大田区のある会社の事例

 

ここで、ある清掃会社の事例を紹介させてください。

大田区で創業25周年を迎えたその会社では、昨年、主力の従業員が3人一気に辞めてしまいました。仕事の質は低下し、採用コストだけがかさむ負の連鎖。

 

追い込まれた社長が決断したのは、技術指導でもノルマ設定でもなく、「従業員に対し、敬意を持って伝えること」への徹底したシフトでした。

 

「給料を払っているんだから言う通りにしろ」という態度を捨て、一人の人間として、プロフェッショナルとして、尊厳を持って接し、心から「お願い」する。

 

その効果は、目を見張るものでした。

12月、年末の繁忙期に過去最高の1500件という案件を、誰一人欠けることなく完遂。さらに、毎年「休み明けに来なくなる」のが当たり前だったこの会社で、今年は離職者がゼロだったのです。

 

若者に視線を合わせ、彼らの「必要とされたい」という欲求(愛と所属の欲求)を満たす。この変化は若手だけでなく、組織全体の空気を変え、ベテラン層も含めた離職率を劇的に改善させました。

 

鈴木コーチの「上書き」する魔法

 

先日、息子のバスケの試合で出会った「鈴木コーチ」の姿に、私は組織再生の真髄を見ました。

 

相手は圧倒的な強豪チーム。勝てる見込みは薄い。

それでも鈴木コーチは試合中、ずっと立ち続けてポジティブな声を出し続けていました。

 

印象的だったのは、選手がシュートを外した時のこと。

失敗して「やってしまった」と肩を落とす選手の気持ちを上書きするように、コーチは叫びました。

「いいよいいよ!今の切り込み、最高だったぞ!」

 

失敗を責めるのではなく、そのプロセスにあった良い動きを肯定し、ポジティブな感情で塗り替えてしまう。

タイムアウト中も指示を与えるのではなく「コミュニケーションタイム」と称し、「君たちはどうしたい?」と選手に考えさせる。

 

試合には負けましたが、選手たちが自ら「次も練習に行きたい!」と目を輝かせていたのは、間違いなくこのチームでした。

 

「厳しさ」を履き違えてはいけない

 

「甘やかしたら、なあなあになる」

「厳しくしないと、組織は締まらない」

 

そう考える経営者の方もいるでしょう。しかし、今の時代における本当の「厳しさ」とは、怒鳴ることではありません。

「相手が最高のパフォーマンスを出せる環境を、プライドを持って作り上げること」です。

 

若者は「怒られたくない」という強烈なプレッシャーの中で生きています。だからこそ、自分の存在が会社に貢献しているという「実感を伴う承認」を求めています。

 

働く理由(パーパス)を語る

相手の貢献に具体的に感謝する

尊厳を持って「お願い」する

やり方は現場に任せ、失敗したら一緒に考える

 

この一見「遠回り」に見える歩み寄りこそが、人が離れない、そして数字がついてくる強い組織を作る唯一の近道なのです。

 

日本だけでなく、世界で進行するメンタルヘルス問題を解決したい。

誰もが「明日もあの場所へ行きたい」と思える会社を、一つでも増やしていく。

 

それが、人と数字の再生人である私の使命です。