崖っぷちの事業再生。倒れそうな岩を押し返す力は、スタッフの「腹落ち」から生まれる

事業再生って、どうやってやるのか? それは、坂道を転がり落ちている巨大な岩を受け止めて、押し返すような作業です。 ちょっとでも油断すると、自分の方に倒れてくる。

 

ノウハウ? 戦略? 事業計画? マニュアル通りにやるのですが、どうにもしっくりこない。 私が事業再生をスタートしてからの3年間は、本当に上手くいきませんでした。

 

ダメだった頃、まずやったのは 「俺のクリエイティブなアイデアでクライアントを救う!」ということでした。

 

アイデアとしては正しいはずなのに、なぜか現場が動かない。 そんなことが続きました。 会社が潰れる寸前なのに、それでも誰も走り出さない。 そんな状況に、私はとてもイライラしていました。

 

次に手をつけたのは、事業計画や会計データの公表です。 「これを見たら、流石にやばいと思うでしょ?」 それでも、人は全く動きませんでした。

 

事業再生のプロは、一体何を見ているのか? 彼らが共通して見ているのは、**「人のモチベーション」**です。

 

それは、その立場に立ってみて初めて気がつくことでした。

 

偉大な経営者・稲盛和夫氏は、側近に反対されてもJALの再生を請け負いました。 稲盛氏は、多忙を極める部長クラスを呼び、缶ビール片手に仕事の姿勢や考え方を伝え続けました。

 

ソニーの厚木工場を建て直した小林茂氏も、従業員の声を聞き、清掃員の方にまで「やる気スイッチ」を押して工場を再生させました。

 

日立を建て直した川村隆氏も、「従業員に対する説明責任」という表現で、従業員が腹落ちするように丁寧に事業部を駆けずり回りました。

 

実績あるベテランのコンサルタントも、自分のアイデアや会計データから入ることはしません。 しっかりとスタッフの困っていることに耳を傾けて解決し、信頼関係を築いてから、データを提示して戦略・戦術に移っていくのです。

 

そう、事業再生の極意は 「スタッフと信頼関係を築き、モチベーションを高める」 その一点にかかっています。

 

そのために必要なのは、

 

感謝の言葉をかける

 

困っていることを助ける

 

相手がしてほしいことをしてあげる

 

人を無視して、事業再生はできません。 そもそも、人間性を無視し続けた結果こそが、業績悪化の「真因」なのですから。